CAPANNAというレストランをつくりたかったワケ【vol.2】

投稿日時:2013/09/13  カテゴリー名:エピソード

初めてホールアルバイトとして働かせていただいてから
1年が過ぎました。

サービスの大切さ、面白さを少しずつ得た私は
おこがましくも、違う環境でサービスをしてみたくなりました。
退社させていただく3ヶ月程前からオーナーにご相談し、
名残惜しい退社をさせていただきました。

当時、スターバックスもタリーズもない時代に
カフェとして出店を続ける当時は都内でも有名なところで
サービスをさせていただくことになりました。

高級なコーヒー豆にこだわり、焙煎にこだわり、
コーヒー豆をミルにかけた後の豆の薄皮も丁寧にとり
ネルドリップにも非常にこだわる、当時では
まだ珍しいダークローストの濃厚なコーヒーを
ご提供するカフェでした。

ケーキも都内での有名店から仕入れた
とても質の高いものをご提供していました。

最初のレストランで得た心あるサービスを志しながらも
同時にバリスタとして、みっちり修行もさせていただきました。

カフェメニューも非常に豊富で、
コーヒーにも、ケーキにもこだわりの強いカフェでしたので
どのメニューも、当時では高価格なものでした。

当時は低価格の喫茶店が多かったこともあり、
良いメニューばかりのカフェでしたが、毎日、ヒマでした。

約4ヶ月くらい経った頃、事件が起こりました。
店長が数日間の売上を持って、逃げてしまったのです。
当時、カフェの拡大を続ける本部の方が来ました。

「出店ペースが早く、今、店長にふさわしい人材を
調整中だから、決まるまで、アルバイトの皆で
頑張ってくれないか?」

と言われ、店長の行為と本部の対応に
ダブルで驚かされました。

当時のアルバイト7名で集まって話し合いました。
7名の中で私は一番年下の19歳でした。
どの年上のアルバイトたちも

「店長が決まるまで、サボれるじゃん」
「それまで、ゆったりやろう」

という意見ばかりでした。
逃げた店長は、とても傲慢で厳しい方でしたから
私は気にしてませんでしたが、
皆、日々の緊張から開放されたかったのでしょう。

最年少の私は言いました。

「カフェメニューもケーキも上質のものばかりなのに
毎日ヒマなのは、もったいないと思いませんか?
振り返った時に記憶に残るような
アルバイトのみで、大繁盛店にするっていうのは
どうですかね。」

長い話し合いを経て、私の暑苦しい話で
皆、しぶしぶ納得してくれました。
発案者の私が中心となり、
アルバイトだけでの無謀な挑戦が始まりました。

まず、毎日、どこもかしこもピッカピカにきれいにしました。
そして、高級感を売りにしているため、
内装や装飾品の全てが高級感があり、
働く私達も立ち襟のシャツに蝶ネクタイに黒いロングサロン
という姿なので、お客様が緊張してしまっているところを
何とかできないか、考え抜きました。

私は、このカフェのコンセプトを変えずにトーク面で
お客様がゆったり、リラックスして楽しめるように、
お客様と必ず接触するシーンの全てに
クスッと和めるような鉄板トークを考えました。
それを皆にも確認しながら、
まずは自分がトライしてみて、
多くのお客様に失礼のない程度に
クスッと和んでいただけるようなら、
全員で、それを実施するようにしました。

皆も、鉄板トークを各シーンの最初に入れることで
お客様の緊張もほぐれたり、会話が弾んだり、
笑ってくれたりすることを体験することで、
だんだんと面白くなっていきました。

徐々に皆からも、よくあるシーンに対しての
鉄板トークのアイデアをもらうようになっていきました。

「それは、ちょっとお客様が引くな」

と私が感じた時は、皆のやる気をなくさないよう、
そのアイデアをアレンジしたりするようにしました。
最年少のクセに、今思うと偉そうですよね。

そのカフェはホールに10テーブルくらいと
大きなカフェカウンターに12席くらいと
2つの空間に分かれていました。

カフェカウンターはバーのように
カウンターに座ったお客様の目の前で
カフェをドリップしたり、つくるのです。

カフェカウンターには、常に2名のスタッフが
対面しているせいか、稀にお客様が
座る程度でした。

私は、カフェカウンターに座るお客様にも
鉄板トークをいくつも考え、
一緒にカウンター内に入るスタッフと共に
それを実施して、お客様が楽しくリラックス
できるようにしていきました。
会話が弾むようになりました。

それでも納得のいかなかった私は
カウンターに入る2名のスタッフが
カフェメニューをつくる際に
当たり前の顔をして、かなりの
オーバーアクションでつくったり、
また、2人が真剣にカフェメニューを
つくりながら、真面目な顔で
2人の声の掛け合いトークに
いくつかのシナリオをつくってみました。

あくまでお客様に失礼のないように、
お客様の気分を害さない程度に、
それでいて、カフェメニューをつくりながら
繰り広げられる2人のバリスタの会話が
思わず、クスッとしてしまうように。
ちょっとした漫才のような感じです。

皆で密に話し合い、皆が納得できたら、
それを練習して、実施して、の繰り返しです。

驚くことに、常連のお客様が増え出しました。

もちろん、上記のことばかりではありません。
店内外は常にピカピカに磨き上げ、
基本的なサービスは鉄板トークを繰り広げながら、
しっかりと行い。
カフェ類のおかわりや、カフェのみの方への
ケーキのおすすめの仕方にも
鉄板トークを行い、
気付けば、お客様はゆったりリラックスしながらも
多くのお客様がスタッフとトークで和む光景で
カフェ店内はあふれていきました。

当然、スタッフ同士もチームワークが良くなり、
チーム同士の空気感も、以前の緊張感からは
想像も出来ないくらいに和やかに温かい空気感に
なっていきました。

そうして、店長が居る時には、1日の売上は
10万円いけば良い方だったカフェが
私達アルバイトチームの

「お客様に楽しんでいただきたい。
楽しんでいただけたら、私達も楽しい。」

という心の方向で統一感を生み、
店長が居なくなって約3~4ヶ月で
1日の売上は30万円になっていました。

そのカフェはビルの2階にあり、
細い専用の階段を20段くらい
上がっていくのですが、
この頃には、階段の入り口である
1階まで、お客様が並ぶようになっていました。

私達は嬉しくて、楽しくて、
より一層、お客様に楽しんでいただきたい気持ちが
強くなっていきました。
夕食時でさえ、行列は途絶えませんでした。

年齢も性格も、そして、このアルバイトを
することになった経緯も、全て違う
そんなアルバイト達が

「お客様に楽しんでいただきたい。」

という心の向きで、アイデアを出し合い
チームワークを強くもって一つになれたことで
快挙とも言える結果を出したのです。
内装もディスプレイもメニューも変えず、
スタッフの心のみで売上を3倍にしたのです。

そんな快挙は本部の方々をも驚かせ、
社長が挨拶にいらしていただけた程です。
それでも時給は700円のままでしたけど・・・。

そのカフェの仲間たちのことは
忘れることはできません。
私がCAPANNAを出店した時も
皆、集まってくれました。

このカフェでの経験が、
飲食業という、
その場でお客様の評価が下される
実力次第、心次第、という大切なことを
学ばせていただけたのだと思います。

その後、私はどんどん飲食業の
奥の深さや難しさと同時に
楽しさや、やりがいを持つようになり・・・

今回は文が長過ぎましたので、
また次回に・・・。

 

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 TERRACE of CAPANNA

 

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