

天然ボケでも、にくめなかったクルー
投稿日時:2013/12/04 カテゴリー名:エピソード
現在二十歳の方が
生まれた頃にいた
アルバイトクルーの話です。
振り返っても
正常な女性だったと思います。
鼻が悪いのか
常に想像以上に口を開けていました。
半開きのレベルではなく
あたかも池の鯉が
エサを求めるかのように、
やや大きめに口が空きっぱなしでした。
私は
「お客様への第一印象が
あまり良くないから
なるべく口を閉じるか
もう少し小さく開けるかにした方がいいよ」
と伝えても、大きく口を開くことが
直せませんでした。
一見、間抜け面に見える程でした。
もし、この人間を殺すとしたら、
口だけを塞げば即死してしまう程でした。
当時のユニフォームは
女性はロングフレアのスカートでした。
そのクルーはトイレから帰ると
何度か、パンツにスカートを
きっちりと入れて出て来ました。
ホールをパンツ丸出しで
歩き回るのを幾度も止めました。
現在のCAPANNAは
クルー間の連絡は全てイタリア語ですが、
当時は日本語でした。
ご来店時には
「いらっしゃいませ」
お帰りの時には
「ありがとうございました」
この2つは
お客様に届くように
やや大きめに発声していました。
そのクルーは
何度も繰り返して発声する言葉が苦手でした。
発声するごとに
本人でも分からない何かしらの影響が出て
「・・・らっしゃいませ!」
「・・・りがとうございました!」
というふうに
最初の文字が言えなくなるのです。
何度もマンツーマンで練習をしました。
しかし、それがまた影響して
「・・・・・・しゃいませ!」
「・・・・・・とうございました!」
と、増々言えない最初の文字が
増えていきました。
オーダーをキッチンに通す際に
メニューを略称として
多少のイタリア語単語を発声していました。
揚げナスのスパゲティは
「メランザーネ」
ニンニクと赤唐辛子のスパゲティは
「ペペロンチーノ」
簡単なイタリア語です。
しかし、彼女は何度教えても
「メランザーネ」を「トランギーネ」
「ペペロンチーノ」を「ペロロンチーノ」
と発声し続けました。
直りませんでした。
途中からは、キッチンクルーも
彼女の場合のみ
「トランギーネ」と「ペロロンチーノ」
に返事をして、理解していました。
そんな彼女なので、
オーダーのとり間違えや
料理やドリンクの
持って行き間違えも多く、
私はなかなか大変でした。
でも彼女は一回一回、
懸命に謝るので
私も懸命にフォローしました。
彼女はそれでも一生懸命だったので、
私も一生懸命に伝え続けました。
でも、彼女は直りませんでした。
半年が過ぎる頃、
彼女は両親の転勤で退社することに
なりました。
その報告を聞いた時、
私は伝えきれなかったことに対する
自分への口惜しさと、
いけない感情ですが、
どこかで、ホッとしていました。
最終日には、
そんな彼女は私に感謝の気持ちを
伝えにきました。
やはり口が、池の鯉のように
大きく開いていました。
そして
「・・・りがとうございました」
と言いました。
やはり無念でした。
CAPANNA in RESORT

